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日々の気付きや考えの記録です

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バーで出くわしたヒステリックな彼女

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仕事始めの最初の週末。ふと思い立って昔通っていた自宅近くのバーに立ち寄った。

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久々のバーの雰囲気に若干緊張しながらも、「ああ、昔よく来てたなあ」と静かにグラスを傾ける。店内にはヨーロッパ調のバーカウンター・テーブル・チェアそしてビアサーバーが並び、薄暗がりの、ブリティッシュパブ独特の雰囲気だ。かといってオーセンティックなバーではないので、肩肘張らずにリラックスして飲むことができる。僕はこういった雰囲気のバーが大好きだ。

そこに流れる80年代の洋楽ポップス。そうだった、ここは日によって流れるBGMが変わるのだ。80年代の洋楽ポップスは海外生活をしていた際によくラジオで聞いていたので非常に耳触りが良かった。貸し切りパーティが終わった後だったためか店内も落ち着いていて、今日はゆっくりとグラスを傾けることができた。

しばらくすると1組の男女ペアが入店してきた。見たところ20代後半から30歳前半の男女。女性の方は満面の笑みで楽しげな様子。きっと他所で飲んできて飲み足りないから、もう少し飲みに来たのだろう。そう思ってまたグラスを傾ける...

 

すると突然店の奥から「バン!」とテーブルを叩く音が聞こえる。

 

振り向くと先ほど入店してきた男女のペアだ。女性の顔を見ると先ほどの満面の笑みはどこへ消えたのか、鬼の形相に豹変している。どうやらテーブルを叩いたのは彼女の方らしい。

自分は酔っ払っているのか?いや、しかしまだ1杯目も飲み干していない。確かに仕事始めでバタバタしているので睡眠不足ではあるが、さすがに1杯目も飲み干さないうちに意識がもうろうとするほどお酒に弱くはない。

そう思っていると再びテーブルを「バンッ!」と叩く音が聞こえる。それに加えて、相方を大声で罵る声も聞こえてきた。そうだ、間違いない。先ほどのテーブルを叩く音も罵詈雑言も、彼女によるもので間違いない。

しかし、ちょっとした言い争いだろう。金曜日の深夜、お酒の入った男女の間ではそう珍しい風景でもなかろう。その場に居合わせた誰もがそう思い、余り気には留めなかった。

しかし、その彼女の罵詈雑言はおさまるどころかエスカレートする一方だ。さすがに店内に居る客はもちろん、パブのマスターや店員さんも苦笑するしかなかった。あの連れの男は一体何をしでかしたのだろう。浮気でもしてバレたのか?彼女の方も年始だし、色々とバタバタしていて精神的なゆとりも無かったのかもしれない。そうだよな、誰だって多少ヒステリックになることもあるよな。

そう思い、隣で起こっている現象を正当化し理解しようとしていたのかもしれない。

 

そして事件は起こった。

「バシャッ!」

「うわ!冷たっ!!」

 

何事だ、と思って振り向くと隣で飲んでいた常連客が「ええ!?」と驚き自分の背中や足元を確認している。

 

ビールをかけられたのだ。

ヒステリックな彼女に。

 

もちろん、そのヒステリックな彼女は常連客にビールをかけようとしてかけたのではない(と思われる)。感情が高ぶって相方にビールをかけようとしたのだろう。そしてそれが見事に(?)隣りにいた常連客にかかってしまったのだ。

もうこうなるとバーのマスターも動き出す。もう彼らは今日ここでこれ以上飲む権利はない。 "You'd better not be here" だ。相方の男性もパブの店員に誘導されるまま会計を済ませ、不運にもビールをかけられてしまった常連客にクリーニング代を渡す。しかしこの常連客がまた男前で「クリーニン代はいいよ。俺は大丈夫だからそれよりも彼女を見てこいよ」と先に店外に出ていったヒステリックな彼女を見てくるように言う。

人は想定外の状況に陥った際の対応でその人が分かると言うが、この常連客はまさにジェントルマンだった。普段はフレンドリーで話しかけやすく、こういう状況でスマートな振る舞いができる、そんな大人の男になりたいと思う。

良い意味で、普段あまり考えないことを考えさせられた。そう思いながら、事態も収まりグラスも乾いたところで店を後にした。

それにしてもあのヒステリックな彼女、不細工だったなあ。

 

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現実は小説よりも奇なり。嘘のような実話の、拙いエッセイでした。

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